2023-01-01から1年間の記事一覧

副業労働者の長時間労働と安全配慮義務 大阪高判R4.10.14

副業を行う労働者が合計で長時間労働となった事例で、使用者の安全配慮義務違反を認めた例として、大器キャリアキャスティングほか1社事件(大阪高判R4.10.14)をご紹介します。 事案の概要 Xは、24時間営業の給油所の運営業務を行うYと労働契約を締結し、給…

職場でのメール監視がプライバシー侵害に当たるか 東京地判H13.12.3

職場において、部下が送受信した私的なメール等を上司が閲読・監視する行為がプライバシー侵害に当たり違法か否かが判断された事例として、東京地判平成13年12月3日・労判826号76頁をご紹介します。 事案の概要 Y(男性)は、A社においてX(女性)の上司であ…

業務上の経費を賃金から控除することの可否 京都地判R5.1.26

業務上の経費を賃金から控除することの可否について判断した、京都地判令和5年1月26日労判1282号19頁(住友生命保険(費用負担)事件)をご紹介します。 事案の概要 Xは、Y社において営業職員として勤務している労働者である。その業務は、生命保険の新契約…

退職後の競業避止義務を定めた合意の有効性 東京地判R4.5.13

退職後の競業避止義務を定めた合意が公序良俗違反で無効と判断された例として、東京地判令和4年5月13日労判1278号20頁をご紹介します。 事案の概要 X社は、主にシステムエンジニアを企業に派遣・紹介する株式会社である。 Yは、X社と労働契約を締結し、A社を…

シフト制労働者に対する退職扱いとバックペイ 東京高判R4.7.7

シフト制で勤務していた労働者に対して合意退職扱いとした措置について、合意退職は成立しておらず、一方バックペイについては原告主張のうち一部期間のみ認めた例として、東京高判R4.7.7労判1276号21頁をご紹介します。 事案の概要 労働者Xは、本件寿司店に…

債務の本旨に従わない労務提供と賃金控除の可否 岡山地判R4.4.19

債務の本旨に従うものとはいえない労務提供を行ったとして、当該労務提供時間分の賃金を控除した措置に対し、違法と判断した例として、岡山地判R4.4.19労判1275号61頁をご紹介します。 事案の概要 労働者Xは、鉄道運転士であった。 Xは、回送列車を電車区に…

就業規則の「不利益」変更とは?

就業規則を労働者との合意なく「不利益」に変更する場合、労働契約法10条に定める合理性の要件を満たす必要があります(労働契約法10条)。ここにいう「不利益」とはどういう場合かとの点は、実務上重要な問題となります。 1 前提:就業規則の効力 労働契約…

事業場外みなし労働時間制の適用を認めた例 東京地判令4.3.30

MRに対し、社用携帯電話を持たせ、また勤怠システムが導入されていた事案において、事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2第1項)の適用が認めた例として、東京地判令4.3.30労経速2490号3頁をご紹介します。 事案の概要 労働者Xは、医薬品の製造・販売を…